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1923年(大正12年)春、
後に日本を代表する民俗学者のひとりとなった宮本常一は、
15歳のときに故郷の周防大島を離れて、
大阪の逓信講習所へ進学しました。
一生にわたって続く長い長い旅の始まりです。
その旅立ちにあたって、彼の父は常一に
「これだけは忘れぬようにせよ」と、
十か条の教訓を授けました。

この教訓は人生訓としてはもちろん、
「ノンフィクションを書く上での要諦」(佐野眞一)として、
また、旅をする際の心得として、
実に興味深いものがあります。

ここでは、その十か条から特に旅をする際の心得として参考になる
5つをご紹介しましょう。
以下、佐野眞一「旅する巨人」(文春文庫)より出典。


・汽車に乗ったら窓から外をよく見よ。田や畑に何が植えられているか、
 育ちがよいか悪いか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、
 そういうところをよく見よ。
 駅へ着いたら人の乗りおりに注意せよ。そしてどういう服装をしているかに
 気をつけよ。また駅の荷置場にどういう荷が置かれているかをよく見よ。
 そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、
 よく働くところかそうでないところかよくわかる。

・村でも町でも新しく訪ねていったところは必ず高いところへ登って見よ。
 そして方向を知り、目立つものを見よ。
 峠の上で村を見おろすようなことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見、
 家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ。
 そして山の上で目をひいたものがあったら、そこへは必らず行って見ることだ。
 高いところでよく見ておいたら道にまようことはほとんどない。

・金があったら、その土地の名物や料理はたべておくのがよい。
 その土地の暮らしの高さがわかるものだ。

・時間のゆとりがあったらできるだけ歩いてみることだ。
 いろいろのことを教えられる。

・人の見のこしたものを見るようにせよ。
 その中にいつも大事なものがあるはずだ。
 あせることはない。自分の選んだ道をしっかり歩いていくことだ。


いかがでしょうか。



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